会社はいくらで売れるのか|計算式と、実際の相場

最終更新 2026-08-15

「うちの会社、いくらで売れるんだろう」——売却を考え始めた方が最初に知りたいのは、たいていこの一点です。ここでは、その金額がどう決まるのかを、計算式と実際の数字で説明します。

結論:3つの足し算で決まります

会社・お店の売却価格は、次の式で計算します。むずかしい理論ではなく、実務でそのまま使われている考え方です。

譲渡価格 = SDE × 業種ごとの倍率 + 設備・在庫

SDE(Seller's Discretionary Earnings)とは、その事業がオーナーにもたらしている経済的な利益の総額です。決算書の営業利益に、役員報酬・減価償却費・支払利息・一時的な費用・オーナー個人の経費を足し戻して計算します。

買い手から見れば「自分がこの事業を引き継いだら、手元にいくら残るか」を表す数字なので、営業利益よりも実態に近い指標になります。

なぜ営業利益ではなくSDEなのか

小さな会社では、オーナーの報酬をいくらに設定するかで営業利益が大きく変わります。役員報酬を多く取れば営業利益は小さくなり、少なくすれば大きくなる。つまり営業利益だけを見ても、事業そのものの力は分かりません。

そこで、オーナーの裁量で決まっている費用をいったん足し戻し、事業が生み出している本来の利益に戻します。これがSDEです。

この考え方があるため、申告上は赤字でも、SDEでは黒字になるケースが珍しくありません。「赤字だから売れない」と諦める前に、必ずこの再計算をしてください。

倍率は業種によって決まっている

SDEに掛ける倍率は、業種ごとにおおよその相場があります。当社は、実際に売買が成立した価格の統計(IBBA=国際ビジネスブローカー協会のデータ)を基準に、業種別の倍率を公開しています。

たとえば飲食業は1.5〜3.0倍、製造業は3.0〜4.0倍、清掃業は2.0〜2.7倍です。飲食が低めなのは撤退リスクが高いと見られるため、製造業が高めなのは設備と技術、取引先との関係が引き継げるためです。

倍率が業種で違う理由は「引き継いだあとも利益が続きやすいか」に尽きます。オーナー個人の腕や人柄に依存している事業ほど、倍率は下がります。

実際の数字で見てみる

例として、営業利益300万円・役員報酬600万円・減価償却費100万円のカフェを考えます。

SDE = 300万 + 600万 + 100万 = 1,000万円

カフェの倍率は2.0〜2.6倍(中央値2.28倍)なので、事業価値は2,000万〜2,600万円。ここに設備200万円と在庫30万円を加えると、譲渡価格は2,230万〜2,830万円になります。

営業利益だけを見ていたら「300万円しか利益がない小さな店」ですが、SDEで見ると1,000万円の利益を生む事業です。この差が、そのまま価格の差になります。

手取りはいくら残るのか

譲渡価格がそのまま手元に入るわけではありません。ここから、仲介手数料と、売主が残す借入金を差し引いたものが手取りです。

手取り = 譲渡価格 − 手数料 − 売主残置の借入

さらに、譲渡益には税金がかかります。株式譲渡か事業譲渡かで税率も課税主体も変わるため、金額が大きい場合は税理士に相談したうえで進めるのが安全です。

当社の査定では、譲渡価格だけでなく手取りのレンジまで表示しています。実際に知りたいのはそちらだと考えているためです。

売出価格は、中央値より少し上に置く

査定で出た金額をそのまま売出価格にするわけではありません。実務では、中央値より1〜2割ほど上に売出価格を置き、そこから交渉して着地させます。

参考として、当社が入手した米国の実際の評価票では、査定の中央値が約20.6万ドルだった案件の公開売買価格は24万ドルでした。中央値の約16%上です。

つまり「査定額=売値」ではなく、査定額は交渉の出発点を決めるための基準だとお考えください。

よくある質問

赤字の会社でも売れますか?

売れます。申告上は赤字でも、役員報酬・減価償却費・オーナー個人の経費を足し戻すとSDEが黒字になるケースは多くあります。まずSDEで再計算してください。それでもマイナスの場合は、設備・在庫・立地・許認可といった資産の価値で評価する方法があります。

従業員が少ない小さな会社でも売れますか?

売れます。むしろ1億円以下の小さな事業を専門に探している買い手(個人・副業・小規模法人)は年々増えています。重要なのは規模ではなく、オーナーが抜けても利益が続く仕組みがあるかどうかです。

査定を頼むと、売らなければいけなくなりませんか?

なりません。当社の査定は匿名・登録不要で、お名前も会社名も電話番号もうかがいません。売却をおすすめする連絡もしません。「まだ売ると決めていない」段階の方が、実際にはいちばん多くご利用になっています。

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